集客が計画通りなら売上目標も達成する構造ですか? 部門間個別最適を避けよう

売上を伸ばすために集客を強化する。その際に、広告予算を増やしたり、新しい集客チャネルを立ち上げたりすることがあります。

ただ、その前に確認したいのが、集客が想定通りに伸びた場合、本当に事業目標を達成できる構造になっているかです。

例えば、今期の売上目標を前期の2倍に置き、そのために集客数も2倍にするとします。集客が計画通り2倍になったら、売上も2倍になるのか。さらに、利益目標にも届くのか。

各変数を延長してそのまま掛け合わせれば一見計画は作れますが、獲得量を増やした際にも同じ条件が成立するとは限りません。

今回は、集客と事業成果の間で起こるずれと、計画・運用時に確認したいことについて書きます。

目次

そもそも、集客数と売上が直接連動するビジネスか

まず、自社の収益モデルを確認します。

商品販売や成約課金では、集客した人が購入・成約に至れば、その件数に応じて売上が増えます。ただ、すべてのビジネスが同じ構造ではありません。

例えば、不動産のポータルサイトなどに見られる掲載課金です。掲載企業数や掲載プラン、契約単価によって売上が決まる場合、ユーザーからの問い合わせを増やしても、そのまま売上が増えるわけではありません。

収益モデルの例集客と売上の関係
商品販売・成約課金購入・成約が増えれば、件数に応じて売上が増える
掲載課金集客が掲載価値を高め、契約単位数・継続率・単価などを通じて売上に影響する

掲載課金でも、集客は重要です。問い合わせを提供できることが掲載企業にとっての価値となり、契約の継続や上位プランへの変更、新規契約につながります。

ただし、集客増が必ずしも売上増に繋がらない点は注意が必要です。

  • クライアントの予算観点でこれ以上増額余地がない
  • 集客が増加しても、クライアントが感じる価値が頭打ちしている

こうした場合、売上は増えません。先に構造を把握したうえで、集客増加アクションを開始していく必要があります。

在庫・対応体制は、増えた集客に対応できるか

集客と売上が直接つながるモデルでも、増えた顧客に対応できなければ、売上は想定通りに伸びません。

有形商材なら、在庫や供給の問題があります。購入したい人を増やせても、商品がなければ販売できません。追加の仕入れや生産に時間がかかる場合は、集客を強化するタイミングも合わせる必要があります。

無形商材や、人による対応が必要なビジネスでは、人的リソースが制約になります。

例えば、人材紹介や不動産仲介では、問い合わせ後のヒアリング、候補の紹介、日程調整、商談などが必要です。問い合わせが増えても、担当者の対応量を超えてしまえば、契約まで進められません。

工程集客を増やす前に確認したいこと
商品の供給在庫、追加供給までの時間、出荷体制
問い合わせ対応担当者数、対応可能件数、初回対応までの時間
商談・提案商談枠、提案に必要な工数、担当者の稼働
サービス提供提供可能件数、必要な人員、品質を維持できる範囲

仮に、現在の問い合わせ数が月100件で、担当者が対応できる上限も100件程度だったとします。

広告を強化して200件に増やしても、対応能力が変わらなければ、売上を同じ比率で増やすことは難しいでしょう。対応の遅れや提案の不足によって、受注率が下がることもあります。

集客数を増やす計画と、増えた顧客に対応する計画はセットです。 集客目標を達成しても、その後の工程で取りこぼしていれば事業目標には届きません。
しかも、集客費用はすでに発生しています。売上が想定ほど増えず、広告費だけが増えれば、利益は計画より悪くなります。
この場合、対応体制を整える、運用を効率化する、供給能力に合わ
せて集客量を調整するなど、他部門と合わせた対応が必要です。

新たに獲得する顧客も、同じ売上・LTVを見込めるか

対応能力に問題がなくても、もう一つ確認したいことがあります。

集客を拡大した際に獲得する顧客から、現在と同程度の売上やLTVを得られるのかという点です。

例えば、現在は自社の商品と相性がよく、単価や継続率の高い顧客層を獲得できているとします。その層ではすでに一定の顧客を獲得していて、さらに集客を広げるには、別のニーズや予算感を持つ層へ対象を広げる必要があるかもしれません。

その結果、問い合わせや契約は増えても、以下のような変化が起こり得ます。

  • 購入・契約単価が下がる
  • 継続期間が短くなる
  • 追加購入やアップセルが少なくなる
  • 顧客への対応工数が増える

例えば、契約数が2倍になっても、平均受注額が従来の75%になれば、売上は単純計算で1.5倍に留まります。継続率も変わるなら、長期の売上への影響も異なります。

拡大時には、全体の平均だけでなく、どの顧客層を増やすのか、その層の単価や継続率をどう見込むのかを確認します。

確認項目見たい内容
顧客層現在と同じ層か、新しい層へ広げるのか
受注・購入単価現在の平均値を使ってよいか
継続・追加購入継続期間やアップセルの見込みは同じか
対応工数顧客が増えた際の人手や費用はどう変わるか
集客コスト拡大後も採算が成立するか

現在の顧客で採算が合っていることと、集客を拡大しても採算が合うことは、分けて考えたいところです。

部門ごとのKPIが、事業目標とずれることがある

こうした問題を見落とす原因として、部門ごとのKPIの違いがあります。

マーケティング部門は問い合わせ件数、営業部門は売上、店舗は販売率など、それぞれ異なる指標を追っていることがあります。

役割に応じて指標を分けること自体は必要ですが、各部門が自分の数字だけを改善すると、事業全体の計画が崩れる場合があります。

部門が追う指標個別に最適化した場合に起こり得ること
問い合わせ件数件数は増えるが、受注率や顧客あたりの売上が下がる
受注率・販売率成約しやすい低単価プランや値引きに寄り、顧客あたりの売上が下がる
売上額売上は達成しても、獲得費用や対応コストが増え、利益が残らない

例えば、計画では一定の顧客単価やLTVを前提に、必要な集客数と受注率を設定していたとします。

営業部門が受注率を上げるために低単価の契約を増やした場合、受注率の目標は達成できても、計画で想定した売上には届かないことがあります。継続や追加購入の条件も変われば、LTVにも影響します。

各部門の目標は、他の変数も計画通りに成立する前提で設定されています。 一つの指標を改善する過程で、その前提を崩していないか確認する必要があります。

計画の前提を共有し、部門間で調整する

計画策定時には、売上・利益の目標から、各部門が担うKPIを配分します。その際、件数や率の目標だけでなく、前提とした条件も共有したいところです。

  • どの顧客層を、どれだけ獲得する計画か
  • 受注率や顧客単価を、どの水準で見込んでいるか
  • 継続率・LTVはどう想定しているか
  • 獲得費用や対応コストは、どこまで許容できるか
  • 在庫や対応体制は、どれだけの件数を受け入れられるか

運用開始後も、KPIを達成できているかに加え、これらの条件が変わっていないかを確認します。

問い合わせ数も受注率も目標を達成しているのに、売上が足りない。その場合、各部門の数字だけを見るのではなく、計画で置いた単価や顧客構成などが変わっていないかを確認します。

顧客層や単価が変わったなら、集客数や予算の配分も見直す必要があります。営業側の売り方が変わった場合も、その影響をマーケティング側と共有しなければ、以前の前提で集客を続けてしまいます。

確認された変化検討する対応
在庫・対応能力が足りない供給や体制を整える、集客量・時期を調整する
新たな顧客層の単価・LTVが低い許容CPA、対象顧客、提供内容を見直す
受注率は上がったが単価が下がった売上への影響を確認し、提案方針やKPIを調整する
掲載企業への反響に偏りがあるエリア・カテゴリなどの単位で集客配分を見直す

部門ごとの個別最適を防ぐには、集客から売上・利益までをつなげて見るモニタリングと、部門間で判断を共有する体制が必要です。

集客は万能薬ではありません。計画通りに増やせた場合に事業目標も達成できるのかを確認し、必要なら他部門と調整する。ここまで含めて、マーケティングの役割だと考えています。

メメントの支援について

メメントでは、獲得後の対応体制や顧客あたりの売上・LTVとのつながりも踏まえ、マーケティング方針をご提案します。

集客を増やす必要があるのか、先に整えるべき課題があるのかを整理したうえで、施策の優先順位を考えます。

集客の拡大や、事業目標に向けた施策設計についてお悩みでしたら、ぜひ一度お問い合わせください。

著者プロフィール

森 行範
森 行範
メメント株式会社 代表取締役
1994年生まれ。埼玉県出身。東京大学文学部卒業後、ナイル、エムスリーキャリアを経て事業会社にて不動産ポータルサイトのマーケティングを担当。並行してメメント株式会社を創業し、マーケティング支援を行う。
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